険者の宿スペランサ                        _
■アルコ・イリス組
*クルクスとイリス関連です
*彼らは他のメンバーとの関わりの中でこそ道化ですが
 彼らふたりの世界に入ると、以外とシリアスなやつらです





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母がついていますよ、
泣くのはおよしなさい、

怖いことは何もないでしょう、
お歌を歌ってあげましょうね……


(王子と母)

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「…王子」
「…、イリスか。どうしたんだい」
「…いえ。……王子、七夕には何をお願いしたんですか」
「僕が何かお願い事なんてするような性質に見える?」
「…したんでしょう?」
「………お見通し、かい?」
「だって王子、七夕の日と同じ顔してるんですもん。…何を考えていたのかなって」
「…………くだらないことだよ。気にしなくていい」
「…………。…、わたしが何をお願いしたかわかりますか?」
「…? さあ…」
「"王子ががんばりすぎませんように"」
「…イリス」
「…王子は、だれにも、なんにも、言わないから、心配です。いつもからかってばっかりで、王子は、…」
「……ごめん。君を信用してないわけじゃない」
「じゃあ教えてください、何をお願いしていたんですか?」
「……"父上と母上、そして殺された民の御魂が安らかにありますように"…だよ。いつまでも遠い国に、両親にしがみついているみたいだけどね」
「何言ってるんですか、祖国のことを想うのとか、お父さまやお母さまを想うこととか、ふつうのことですよ? わたしも、王さまや王妃さま、あの国を思い出しますし。
 …王子、いつもそういうふうに素直に言ってくれればいいのに」
「僕はひねくれ者なんだよ。いつもあの鉄拳娘に言われてるとおりに、ね。…無駄なプライドばかりあるんだ、自分の弱みを誰かに見せるのなんて耐えられない。…そういう人間なんだよ」
「王子は、厄介なお方ですねえ…」
「どうとでも言ってよ。君だって誰にも何も言わないじゃないか」
「わたしは…うーん……
 …わたしも厄介な人間なのかもしれませんねえ」
「どうせ君のことだから誰にも心配かけたくないとか言い出すんだろ?」
「うーん、まあ…」
「これについてはお互い様だね。動機はどうあれ、僕も君も何も言わない道化に変わりない」
「あはは、まあ、そうですね」
「…でも、まあ、少しでも言えるとすっきりするものだね。ありがとう」
「王子、らしくないですよ」
「君、僕を一体なんだと思ってるのさ」

+

王子ですが女みたいになりました。女と見まごうほどの美少年です。だめですか。

プライドの高さゆえに人前でこんな表情をすることはありませんが。イリスの前では、稀に。
ある意味似たもの同士のふたりです。

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「おうじ、おうじー」
「うん? どうしたの、イリス」
「おかりしたご本よみましたー」
「あ、前より読むの早くなってるんじゃない?」
「でもね、でもねー」
「うん?」
「まんなかのところ30ページくらいとばしちゃったです」
「Σイリスそれ読んだって言えない!」

イリスはお忍びの王子に城下街の路地裏で発見されて引き取られます。大変運がよかったです。

孤児で親の事も全く覚えてはいないこの少女のことを一番気にかけたのは王妃でした。
親に売られて、一歩間違えれば娼婦になっていたかもしれなかった王妃は、自分のような境遇になりかねない子たちを保護したいと常々考えておりましたがそういうわけにもいかず、せめてもと、息子の連れ帰ってきた少女を保護しました。
そしてイリスと名づけます。教育面にも随分気を配ったようです。それについていろんな声がありましたが。
かくしてこの幸運の少女イリスは、王宮で育てられていくわけであります。クルクスともなかよしでした。
ちょっとズレたあたりと能天気な笑顔がみんなの人気者でした。
自分に目をかけてくれた王妃はもちろん、王も、王宮の皆も大好きで、王子は友達でもあるし、兄弟みたいなものでした。
いつか立派になって、自分のような境遇の子どもたちを助けてあげたいともぼんやり考えていたようです。
国の陥落するあの日まで。


名前はアウレリア
クルクス王子のお母上です。

親に小さい頃に人身売買専門の商人に売られたところを王宮の人間に買われて、遊女として育てられた人。
聡明で芸達者だった彼女を見初めた王に娶られ王子一人を産みました。

王様はなんていうかえらい低姿勢な御仁でした。
「私は民の為に尽くしてきたつもりだ、
 一度でいい、たったひとつでいい、私が望んでも構わないだろうか」
とかいってアウレリアをその王宮の人間のもとから妻に貰おうとしました。




小さいときのイリス。

太陽のような金の髪も薄汚れ、
青空のような青い瞳もみることはなく、
ただ星を見つめて
ただ夜の空気を吸い
孤独に、でもそれを孤独と知らぬまま、
死なないために生きていた時代。

【イリスのつぶやき】

やっぱり辛くなることもあります。
わたし、これでもやっぱり、女の子ですから。
それはどうやっても偽れないものなのだと思います。

髪の毛が伸びてきました。
時が経つのをこんなところで感じます。
時が経つということは、わたしがどんどん女になるということではないかと思って、すこし怖い。
王子を守れるように、男の子に生まれてたらよかったのにな。
性別の差なんてなければいいのに。な。

なんて、呟いてみたりします。
変われないものですね。

いえ、変わったのかもしれませんね、
昔のわたしはこんなこと気にしなかったし、ううん。

それでもわたしは強くあろうと思います。
だからあなたのお傍に置いてください。

あなたはわたしの希望ですから。
だからあなたも負けないでくださいね。

いつもふざけてみせる王子へ、
いつもふざけてばかりのイリスより。


心配しないでくださいね、
今日はあんまり月がきれいだから、
すこし、感傷的なだけです。ほんとう。うん。




「髪伸びたね、イリス」
「そうですね…」
「最近は切ってないのかい」
「なかなか時間がなかったのでー」
「そっか」

「…王子、生まれた意味、考えたことありますか」
「それは、これをするために生まれてきた、とかそういうものの存在のことかい?」
「ええと、まあそういうものですね」
「そんなものはないよ」
「わ。即答なんですね」
「僕は運命論っていうものが嫌いでね。定められているなんて考えるのはまっぴらごめんだ」
「それは解らないでもないです」
「生まれた意味、なんてものは存在しないと思う。けど、人は生まれ思考する存在だからこそそれを探そうとするんだとは、思う。…続けても?」
「はい、どうぞ」
「あんまりこういう話が出来る相手がいないもんでね…じゃあ続けるよ。
 …僕は生まれた意味なんてもの信じないけど、生まれた以上は、生きている以上は、意味を――というよりは、生きる理由を探したいと思ってる。
 何も求めない生は空虚だと…失ったことに絶望して"何のために生まれたのか"なんて自問して命を絶ったりするのはごめんだ。
 何のために生まれた? そんな問いは馬鹿げてる。何のために生きるのか、今生きて何をしたいのか、それを探さないなんておかしい」
「はい」
「僕は生き延びた。君のおかげでね。…僕が生き延びたことに意味があるのかどうかはわからないし、僕はそんなものはいちいち定められてるとは思わない」
「はい」
「だけど無為に生きることができるかい? そういうとき君はどうする?」
「ないのなら…作ります。わたしは、わたしの、生きる意味を。…王子は?」
「僕もだ。意味も、価値も、作り出せばいい」
「…けどわたしは、わたしの両親がいないのも、国を失ったのも、すべて定められたことなんじゃないかって、思っちゃったり、します」
「それは君の答えなんだと思う。…君はそれで、いいのかい? すべて定められているっていうそのこと」
「いやです。わたしが生まれたときから、何度も、何度も、たいせつなものを失うことが定められていたなんて、絶対にいやです。
 …でも、わからないんです。わたし、よくわからなくて、……」
「…真理なんて僕たちには見えない。だから僕は自分の真理を見つけようと足掻いてる。
 たとえ全てが定められているのだとしても、そうでないとしても、僕は僕の信じた生き方をしたい。僕は自分の生きる理由を探してる。
 …君の出した答えは、君にとっての真理なんだと思うよ。そして僕にとっての今の真理がこの考えなんだ。
 信じられるものはそれぞれ違う。だから、君には君にとっての真理が見つかるといいと思う」
「…そうですね」
「でも、今までの全てが定められていたとしたら、僕はね」
「…? はい」
「こうやって今の仲間と出会うために、色々なものを失ってきたのかもしれない。
 今の生活は結構気に入ってるから。まあ、複雑なところなんだけど、ね」
「あはは、わたしもです。…みんなたいせつで、困ります」
「ふふ……さて、そろそろ寝ようか…今日は冷えるね。風邪をひかないようにね」
「王子も」
「わかってる、大丈夫。…君は僕の生きる理由のひとつでもあるんだから、無理はしないように」
「わ」
「何だいその顔は」
「そんなこと言うなんて思わなくって」
「僕のあとをとてとてついてまわったちいさな可愛い妹みたいな女の子を、僕は僕なりに大切に思ってるってことだよ。わかったらもう寝なよ、ほんとに風邪ひくよ」
「…えへへ、はーい」




小さな太陽 可愛い妹
君と出会って
僕は初めて孤独を忘れた

+++

「♪」
「ねぇイリス」
「なんですかーおうじー」
「ちょっと重いな」
「そうですかー」
「おりてくれないんだ?」
「イリスはずっとのってますー」
「……(笑)」

++

いいのかな拾われっ子がこんな王子とじゃれついてて(笑)

王子が仲間の中で唯一心から穏やかなのはイリスといるときです。
小さい時からとてとてひょこひょこついてまわって「おうじーおうじー」とか言って懐いてた彼女といるとき、
いつも何故だか孤独感にとらわれていた王子は癒されていたのでありました、と。

ちょっと前に自分で書いた
"僕のあとをとてとてついてまわったちいさな可愛い妹みたいな女の子を、僕は僕なりに大切に思ってるってことだよ"
っていう王子の台詞がなんとなくグッときました。
そうか、可愛がってるんだなと。
適当に書いてはすぐに忘れ、あとで思い出してグッときてる自分はアホです(笑)





【アナスタシアとクルクス】
「…」

「寒くありませんか?」
「…アナスタシアさん? …少し、寒いですね」
「もう、そんなところにいるから…風邪をひきますよ」
「…大丈夫です」


「…クルクス、何かあったの?」
「いえ」
「ならどうしてそんなに浮かない顔をしているの?」
「…いつものことです」
「違うわ。…話すのが嫌なら何も言わなくていいけれど…差し支えなければ、話してくれませんか?」
「…別に何があったわけでもありません」
「…そう…」


「…私…泣いてばかりで話もできないで、わけのわからない人だったでしょう? 信頼できないかもしれないけど、何かあったら言って欲しいの。役立たずの私だけど」
「そんなことは…」
「あなたは王族で、だから私みたいな人間がこんなこと言うのはおかしいけれど、私は…あなたと本の話をするのが好きです。あなたが笑うと嬉しい。だから、あなたが悲しい顔をしていると、悲しいわ」
「……」
「…ごめんなさい。迷惑ですね」
「違う、僕は…僕は…」


「…王子、アナスタシアさん悲しそうでしたよ?」
「…僕は…」
「…悩みは他人に話せませんか?」
「…馬鹿馬鹿しいことを言ってもアナスタシアさんをわずらわせるだけだろ?」
「言ってほしい、ものですよ」
「…それがわからないんだ」
「え?」
「昔は…国にいたころは。僕は、両親の影響もあって、色々慈善事業にも関わっていたろう?」
「ええ」
「そのときは、心から…誰かを、助けたいと…思っていたはずなんだ」
「はい」
「…なのに…今は、話を聞くのも、関わり合うことも、煩わしい。何も感じない…つき動かされることもない」
「…」
「怖いよ。…怖いんだ。僕はこのまま何も感じなくなるんだろうかって。そのうち空を見ても花を見ても美しいとも思わなくなるのかって」
「王子…」
「…こんなくだらないこと、誰かに言ってもしょうがないと思わないかい?」
「わたしには、言ってますよ?」
「…誰かに言いたかったということかな」
「はい」
「…君くらいにしか言えないな。よくわからないけど」
「わたしはいつでも聞きますよ。王子が辛そうなの、いやです。…でも」
「うん?」
「やっぱりアナスタシアさんにも言えるといいんじゃないかなって」
「何故?」
「あの人は、なんか…王子のこと、わかってくれる気がします」
「…僕にはわからないな」