20 救い

 ――何か――胸を掴まれているような、そんな気持ちになる。
 これは、何なのだ――?

 目の前で囚われていた少女はその呪縛から解放された。
 流れる金色の髪も、その深く蒼い眼も、懐かしさなど感じさせるわけではないのに。

 ああ、
 これなのだろう。
 自分が見つけようとしていたものは――
 
 ひかりを纏ったまま、地に足を着く少女。
 そう、分かるとも。
 例え姿かたちが変わってしまったと言えども。

 微かに微笑むその少女には、面影がある。
 彼女は、確かに――


 時の闇の中で独りかなしみに囚われていた姉。
 どうしようもなく、為すがままに絶望の中で取り込まれてしまった姉。
 いつでも儚げに微笑んでいた姉、いつでも自分を慈しんでくれた姉。
 すぐ側にいたのに、だが手を伸ばした途端に掻き消えてしまった淡く輝くあのひと。
 神秘とは恐らく彼女だったのだ。

 月が巡り
 星が煌き
 そして今此処に居る

 貴女が居て
 俺が居る

 遠い記憶
 微かな過去の記憶
 貴女を追い 時を駆け――

 あの音が聴こえるか、
 あの音が聴こえたか。
 奴が貴女のために織り上げたハーモニー。
 一万年の歳月を超えて、やっと――
 貴女のいのちは救われたのだな――


 姉上、貴女の魂は何処へ還ったのだろう。
 この星のすべての生命の中に――?
 それとも貴女が生み出したあの娘の中に――?
 ふたたび、ひとつへと戻るか――


 もう俺が出来ることは何もない。
 それに奴ならきっと貴女を幸せにするだろう。
 俺に出来ることなど何もなかったのだ。
 奴だけがきっと、貴女を救えたのだな。


 貴女の次なる生が穏やかで安らかで幸せに満ちているように。
 ささやかなこの祈りを――






   ――生まれてきてくれて有難う、姉上。




 貴女がいて、貴女が生まれてくれて、
 本当に俺は――


 さようなら、姉上。
 そして――魔王、ジャキ。
 俺は俺の時を生きよう。
 そして貴女は貴女のいのちを紡ぐがいい。
 


 また、巡り逢えんことを祈って。





クロノクロスのアルフ=ジャキ説プッシュ話。