門貴族と労人  - シトラス家 -             _



ご機嫌いかがでしょうか、皆様。
私リッセは全くもって不愉快極まりない日々です。
それもこれも私の仕える名門貴族のお子様方に
振り回されっぱなしの毎日なせいです。



「仮にも名門貴族のご子息ご令嬢であるというのに!
 何ですかその適当な態度は!
 もっと当主さまを、お兄さまを見習って下さい!」

 私がそう懇願すると、何て応えると思いますか?


「えー」
「えー」

「えー」じゃねえよって感じですよね。

私が! 貴重な青春時代を!
このあほ兄妹に振り回されてしまって早17年!
私も27歳になりました…

私がこの家に引き取られたのは10歳の頃でした。
当代当主さまであるジークヴァルトさまに武芸を教えていただいて、
お優しくてお強いジークヴァルトさまに恋をしていたこともありました。
ありましたけどね。
まあなにせ8歳も年下の可愛い可愛い許婚がいらっしゃいますしね。
どうせ若い方が好きなんでしょう。いえ、やきもちじゃあありません。
だんだん恋心も失せてゆきましたからね。断じてやきもちでは。


「…………」
「………ど…どうしたのかな、リッセ?」
「ジークヴァルトさまの弟君と妹君をどうにかしていただけません?
 本気で手に負えないんですけど」
「…い…今となっては私にも手に負えないんだ、リッセ。申し訳ない」
「申し訳ないとかそういう問題じゃないんですよね。そろそろ私も三十路なんですよね。私いつまであの兄妹に振り回されれば解放されるんです?」
「…………えーと」
「思えば十代後半から既に子育てに疲れた女のように成り果てていたような気がするんですよね。交際する殿方のひとりも出来ないままでした。私、そろそろいき遅れてしまいそうなんですよね」
「…………いや、リッセなら綺麗だからきっといい相手が見つかるだろう。だからそんなに心配しなくても大丈夫だと」
「今現在自分の自由な時間すら持てていませんがその現状で一体どんな殿方と」
「例えばアレクとか」
「しばきますよ。」
「ああいけないそういえばフィロメーラを待たせているんだった。
 申し訳ないがリッセ、私はこれで……」
「……………」

そろそろいき遅れそうだと言う私にむかって、
ろくでもない弟はどうだとか、
ましてや私より年下の可愛い可愛い許婚(フィロメーラ様)をダシに使うだなんて信じられますか。
ジークヴァルトさまはお優しくお強くて貴族らしい貴族、というような方ですが、少々性格が煮え切らなくて駄目ですね。
なんていうかですね、うまい具合にはぐらかして逃げるなバカ当主。


とまあ、色々暴言吐いたりもしましたが、
リッセはシトラス家に大変感謝しています。それに、皆さんのことが大好きです。その気持ちに変わりはありません。
まあ、好きですが、いちいち腹が立つのもまた事実ですけどね。


さて、本日も頑張ってまいります。