門貴族と労人  - シトラス家 -             _

それはまだ私リッセがシトラス家に引き取られて間もない、
10歳の頃の記憶。


「それじゃ、行ってくるからね。
 いいかいリッセ、いい子にしているんだよ。弟たちを頼む」

ジークヴァルト様はその時16歳でした。
旦那様と一緒にお出かけするとのことで、家を空けることになったのです
私は彼の弟君と妹君の面倒を見るように申し付けられました。

恐らくそれは、私と家族の仲を深めようという配慮もあったのだと思います。
優しいお方だったから、私は当時彼に憧れていました。当時は。ええ、いい方ですからね。


「は、はいっ!」

――いささか緊張しながらも、私は精一杯力強く答えたつもりでした。


(ジークヴァルトさまにたのまれた……///)

信頼されたというのと、お話できたということで、私は胸の鼓動が高まって収まりませんでした。
そんなとき、ひとりで赤くなってきゃーきゃー言ってる私の服を背後で掴んでくる人がおりました。


「――リッセ?」

私とぼっちゃまが、初めて言葉を交わした瞬間でした。
ジークヴァルト様によく似ていらっしゃる、小さな可愛いおぼっちゃま。
シトラス家次男、アレクシウス様でした。ええと、私が10歳ですからぼっちゃまは7歳ですね。
ぼっちゃまは、兄上様であるジークヴァルト様に私に世話になるようにと言われて挨拶にきたようでした。


(か、可愛い…v///)

私が思わず胸中でそう呟いているのを彼が知る由もありません。
ぼっちゃまは、胸に手を当てて丁寧に言った。

「兄上がお留守の間、よろしくお願いします」
「あ、はいっ」

――ええ、彼は昔からとても丁寧で物腰の柔らかい人でした。
このまま行けば末はジークヴァルト様のような素敵なお方になると、思っていました。





それでも、時は過ぎて――

















「ぼっちゃま、あんなに可愛らしかったのに…ふふ、あはははは」
「ははは、リッセはずっと美人だね?(にこり)」
あーはいはい もういいです」

――いつの頃からでしょう。
お可愛らしくて聡明でいらしたぼっちゃまは、
老若問わず女を口説きまわる女たらしになってしまわれたのです。
ああもう一体17年の年月が何を変えたというのでしょう。
赤ん坊だったお嬢さまも、すっかりお転婆ガキ大将的な勝気少女になってしまわれました。
何ですか。やっぱりこれってあれですか私が悪いんですか? 認めません。

黙っていればいい男です。
それは認めましょう。
だけどことあるごとに女を口説いてまわってしわ寄せがどこにきてるのか考えたことがあるのかコノヤロウ!(ずがん)

――あら失礼、少し熱くなりすぎました。


「何故僕が変わってしまったのかって? それはあの日君に恋をしたからさ」
「へー。」

ぼっちゃまの戯言は流しておくことにしましょう。



そういえばジークヴァルト様のことですが、
私の初恋はそのうちに砕け散りました。

いえ、結構続いたんですけどね初恋。
ハチャメチャに育ってきた弟君と妹君の行動について責任放棄し始めたあたりから
私のほうで幻滅しましたね。ええ。


いえ、やっぱり散々言っていますがシトラス家は大好きですよ。
これでもうちょっとお子さまがたが大人しければ言うことないんですけどね。

まあ何はともあれ、今日も頑張って参ります。

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苦労人リッセの記憶と現在(笑)

アレクは女たらしだけれども嘘はつかないので、
さらっと言ってますが一番最後のセリフはあながち嘘でもありません。今はどうか謎ですが。

あとどうでもいいんですが
シトラス家のみなさんの眼の色は紅いというよりはダークレッドなのですが
私が差を出せていません。(ぉ)