それは、夕暮れ時のこと。


 陶器でつくられたようになめらかないろをした、だが意外に強固なそれは、ひとりの男によってそっと椅子の上へと運ばれた。その古びた木製の椅子が、きし、と音をたてる。
 開け放たれた窓を覆い隠すようにして閉められたカーテンの隙間から、夕焼けのいろをしたひかりが差した。
 白いドレスの中から、しなやかに、そしてとてもぎこちなく伸びたその白い四肢が、夕焼けのいろに身を染めながら、力なくぶら下がる。その小さな姿を、男 はいとおしげに眺めて。そのリラの花にも似た淡い紫のいろの髪を、撫でる。さらりとゆれるそれは、ひとのそれではなく、とても手触りのいい、そしてとても なめらかな絹糸のようなもの。
 男は自らの姿をも夕焼けのおぼろげないろに染めながら、椅子の上にかけたそのしなやかな――少女の姿をしたそれの腹部についていた小さな蓋を開き、工具らしきものでそこを弄る――そして、蓋をしめて。
 少女の姿をしたそれは、やがてゆっくりと絹糸のような睫毛のおりた白い瞼をひらく。
 不思議ないろをたたえたガラスのようなその瞳が、真っ直ぐに目の前の男を見る。


「おはよう、コッペリア」

 初めて認識した、くれないいろに体をそめたその男が、穏やかにそれに笑顔を向ける。
 少女の姿をしたそれ――コッペリアは、とりあえずぎこちなく首を傾げた。





 そして早くも年月は巡る。